63℃――
太田市民であれば、なんとなく見覚えのある文字でしょうか。
太田市新田市野井町にある、東毛酪農。「学校給食の牛乳だ!」と思いだす方も多いかもしれません。「63℃」は、この東毛酪農さんの牛乳の商品名。なぜ63℃……?東毛酪農業協同組合さんに伺って気になる真相を確認してみたら、なんとも奥が深い牛乳の世界があったのです。
東毛の“毛”は地域のプライド
「東毛の“毛”って、どういう意味か知ってるかい?」
組合長の大久保さんから、いきなりの質問。両毛、上毛、毛里田……考えてみると、毛が生えている地域名称がやたらと多く存在します。
「う~ん、“毛”の意味……全く想像もできません……」と、群馬在住歴4年のわたし。
「所説あるけど、この辺が米と小麦の二毛作が盛んだから、その“毛”からきているんだよね」――大久保さんが、そのように教えてくれました。
雪は降らず、地乗りもよく、気候がよいからこそできる、二毛作。だからこの辺は、「毛の国」と呼ばれてきました。さらにこの辺りは、米・麦に加えて、養蚕も盛んだった地域。その養蚕が衰退し、余った土地を野菜作りや畜産に再利用したのです。
「“毛”なんていう字は、食品に使うと嫌がられるでしょ。だから普通使わない。でも、“毛”は地域の歴史であり、たいせつなシンボルマーク。プライドをもって、“東毛酪農”を名乗ってるんさ」と、大久保さん。一気に“毛”に愛着が湧きました。
子どもたちにおいしい牛乳を
「太田の小学生は、こういうのを持っててね。わたしも載ってるんだよ」と、大久保さんが見せてくれた教科書。
太田の歴史や産業についてが、1冊にギュッとまとまっていました。太田市の子どもたちの地元愛が深いのは、こうやって学校できちんと学んでいるからなんですね。小学校3年生になると、東毛酪農さんにも見学に来るそうです。
「牛乳嫌いの子どもが多くなってるでしょ。それは、おいしい牛乳を飲んでいないから。太田の子どもには牛乳嫌いになってほしくないし、地元でとれた牛乳をできる限りおいしい状態で飲んでほしいと思ってるん」と、大久保さん。
東毛酪農では、東毛地域の酪農家26戸から仕入れる生乳を処理して牛乳にし、群馬県内と東京都内の学校合わせて181校に出荷しています。
「うちの牛乳に慣れて育った子どもたちは、ほかの牛乳は飲めないっていう子も多いんだよ。学校給食用の牛乳は、75℃で15秒の殺菌。酪農家さんの牛乳を、できるだけ手を加えない状態で飲んでほしいからね」
75℃……?15秒……?一体何のことなのだろう……
後半はいよいよ温度と秒数の謎、そしてさらに奥深い牛乳の世界に迫ります!
(ライター:岩﨑未来)
「東毛酪農低温殺菌牛乳63℃」を使用したソフトクリームがキタノスミスコーヒーで食べられます!
東毛酪農業協同組合
住所 群馬県太田市新田市野井町741-1
電話 0276(57)0111