独自農法で辿り着いた、人と自然にやさしいマンゴー 『やなぎた園』 

太田市毛里田地区、東今泉町。のどかな風景と工業地帯が交錯するこの場所に南国果物の代表「マンゴー」を作っている農園があります。“漢方農法”“ボックス栽培”で南国に負けない糖度の「マンゴー」を生産している「やなぎた園」さん。その農法のひみつとは?代表の柳田 皓治さんにこだわりの農園、マンゴー愛について聞かせていただきました。

 

 農業が笑顔を”育てる”

—  今日はお邪魔します。マンゴー畑がこちらにあるなんて全然気づきませんでした!驚いています。さて、いろいろとお聞きしたいことはあるのですが、柳田さんが農業を始めたきっかけを教えていただいてもいいですか?

 

「もともと僕は介護福祉士として、特別養護老人ホームで仕事をしていました。そこで、利用者の方から『土がいじりたい』『なにか育てたい』という声があり、農作物を一緒に作り始めたんです。小さなプランターで野菜を少し作ったり、その野菜をみんなでカレーにして食べたり。やがて利用者の方の笑顔もふえ、職員と利用者の方が農作物を介して楽しそうに話している風景が増えてきました。そういった活動のなかで、”土や植物には不思議な力があるんだな”と気付きました。そうこうしているうちに、僕自身がどんどん『育てる』ことにハマってしまって。それで一念発起して農業をはじめようと決心しました」

 

―正に一念発起。すごいですね。農地はどうしたんですか?

 

「もともと祖父がお米を作っていた土地がありました。自宅用に野菜も作っていて、それを小さい頃からなんとなくですが、見ていました。やがて祖父も年を取り、畑をやめてしまって、その後ずっと休耕地になっている畑があったんです。祖父にお願いして、その休耕地を借りることにしたんです。」

 

《ハウスの中でたわわに実るマンゴー》

 

―いきなり”農業始める”って言ったとき、ご家族には反対はされなかったんですか?

 

「されましたけど、厳しいのは承知でやるんだろうし、自分で経験してみないとその厳しさもわからないだろうと(笑)」

 

 1人目の師匠~マンゴーとボックス栽培

 

―でも、どうしてマンゴーだったんですか?

 

「農業を生業にしようと決めてから、大好きな果物を栽培しようと考え、いろいろ調べているうちに、鉢植えを使った“ボックス栽培”という農法に出会ったんです。こまき園という、宇都宮の果樹園さんです。そこで駒場 騏一郎先生にお話をお聞きしました。お話をお聞きしてこの栽培法はすごいな、いいなと思って。すぐに見学に行かせてもらいました。その思いは確信に変わり、その場ですぐに弟子入りしました。そこでマンゴーを育てていて。もともとマンゴーが好きったのもあるのですが、直感でこれしかないと。マンゴーは1年目から実がなり始めて、2年目、3年目から収穫が可能なんですよ。品種はアーウィンという種で、いわゆる宮崎県などで有名なアップルマンゴーです。」

 

《ボックス栽培》

 

―すぐ弟子入り!決断力がすごいです。ボックス栽培という栽培方法は初めて聞きました。どのような栽培法なのですか?

 

「鉢植えによる栽培法で、鉢の中に植えることで、土に植えたときは太くなる根っこが鉢の中に細かくびっしりと生えます。そのため土の中の栄養分や、水なども効率よく吸収できて成長のスピードも早いんです。栄養分をしっかりと吸うから、実も大きく甘くなります。」

 

《ボックス栽培しているマンゴーの様子 さながら熱帯雨林のよう。》

 

 2人目の師匠~マンゴーも僕も漢方に救われた

 

―次は、やなぎた園さんのもう一つの特徴の漢方農法についてお聞きます。どうして漢方農法を始めようと思ったのですか?

 

「最初は他の農家さん同様、害虫に悩まされていわゆる普通の農薬を使って栽培をしていました。しかしそれでも、害虫や病気の発生は毎年起こります。農薬などの化学反応で一時的に収束はしますが、次世代の害虫たちが爆発的な繁殖「リサージェンス(誘導多発生)状態」になってしまうこともあります。

農薬への対抗力もどんどん強くなる一方で、恐怖すら覚えました。それでもなんとか最初の1,2年は収穫ができるようになりました。しかしその頃、僕自身も原因不明の体調不良が起こるようになってしまって。原因がわからないまま、いろいろな病院に行きました。やがて農薬を散布するときに体調不良になるということがだんだんわかってきました。農薬を体に受け付けない体質だったようです。

そんな事もあっていろいろ模索していたときに、お客様から植物の生薬で農業を研究している方がいるよと教えていただいたんです。それが漢方未来農法を進めている漢方環境安全対策普及協会、理事長の星野 英明先生との出会いです。さっそく星野先生にお会いして植物が持つ効能や科学物質の怖さなどを教えていただき、僕が求めていた本当の農業はこれだと思い、すぐ弟子入りしました。

 

―またもや弟子入りの決断が早い(笑)。漢方未来農法とはどのような農法なんですか?

「簡単に言うと人間に使う漢方の生薬を植物に使うということです。その結果、植物が持つ本来の力を高め、自己防御能力を利用して病害虫に勝てる丈夫な植物に育ちます。
さらに生薬の効能が土中の微生物に働きかけ、土の状態を健全に保ち、植物の免疫力・生命力を高めていく栽培法です。漢方はもともと自然由来で、人間の体に使っている漢方と同じものを土に転用することで、強くすることができます。」

 

-なるほど。漢方は人間にも植物、土にも効くと。

「はい。土を強くすることで植物本来の力を取り戻して木が強くなり、虫にも勝てるようになってきました。具体的には生薬をブレンドしたもの使い薬膳酒を作りそれを木に散布したり、土壌に撒いたりします。害虫にも薬膳酒を希釈して散布します。農薬ではないので、殺すのではなく、嫌がらせをして逃げてもらうというイメージです。この農法をはじめて3年くらいですが、ハウス内は様々な生き物が共生できるようになりました。不思議と害虫が発生しても過剰に増える(リサージェンス)こともありませんし、あまり悪さもしません。化学農薬を使わないので鉢植えの中にも外にも様々な微生物や益虫が暮らし、土壌を健全に保っていてくれています。

《薬膳酒を仕込んでいる樽など》

 

-農薬は益虫も減らしてしまうと。そういった副作用もあるのですね。お話を聞いていると素晴らしい農法なのに、どうして皆さんやらないのでしょうか?

 

「やはり手間がかかってしまうということだと思います。あとは価値観でしょうか?僕はこの農法を学んでから、価値観が大きく変わりました。普通の農法から切り替えるのは相当なリスクも考えてしまうと思います。昔は、私も安心感を得るために農薬を使ってましたから…。ですが、物事の変化に恐れず迷わず素直になることが一番だと学びました。
今は農薬散布による体調不良もなくなり、僕自身が救われたと思っています。また、収穫量も漢方を使い始めてからどんどん増え、今ではスタートした頃の2倍以上に増えています。」

 

―それはすごいですね!

 

「もちろん、木が大きくなってきたということもあると思います。他にも漢方未来農法に変えて最初の収穫のとき、常連のお客様から”何か変わったことしたの?何したの?味が濃い!美味しい!”って言われて。僕は漢方未来農法に変えたことを誰にも言ってなかったのですが、お客様が気付いてくれました。その時はほんとうに嬉しかったですね。」

 

さらなる出会い。大川先生の”藍染液”

―このボトルに入っているのが、薬膳酒ですか?

「いえ、これは発酵した藍染の廃液なんです。」

《藍染廃液のボトル》

―藍染の廃液?

 

「佐野市の藍染作家さん大川 公一先生の藍染に使われた廃液なんです。漢方未来農法を始めて、まもなく星野先生より紹介してもらったんです。藍染めに使う藍草には様々な防御効能があるから、正藍染の廃液を栽培に活かしてみてはと。大川先生が作る正藍染の染め液は、日本でも古来から伝承される希少な技法です。藍草から藍を醗酵させて抽出することで化学染めにはない藍本来の力を引き出すことが可能なんです。」

 

―確かに藍には防虫や殺菌効果があることは聞いたことあります。いわゆるジーンズのインディゴですよね。19世紀アメリカのゴールドラッシュの時、虫除けのために使われたんですよね。

 

「よくご存知ですね。その藍染の廃液を防虫などに利用しています。漢方薬膳酒と混ぜて希釈したり、そのまま散布したり。大川先生が作る染め液だからこそマンゴー栽培へ使うことも可能なんです。本物の藍染なので。」

 

―太田市はもともと藍の産地ですし、スバルの創業者中島知久平さんの生家も藍栽培をしていたとか。不思議なつながりですね。

 

「そうなんですよね。市内でもその藍草栽培を復活させようとしている植木さんという方がいて、その方ともいろいろ一緒に相談や研究したりしています。本当に藍染の藍は優れた植物で、その藍染の液体を使うことで様々な虫からマンゴーを守ることができるようになりました。」

 

―そうなんですね。いろんな方との出会いがつながっていますね。

 

「お客様から先生を紹介されて、その先生からまた先生を紹介してもらって。ここに実っているたくさんのマンゴーはたくさんの人達の力でできているんです。たくさんの人と人から学んだことが今のマンゴー栽培につながっていると思います。このマンゴーももうすぐ完熟して収穫です。たくさんの光を浴びてたくさんの方の知恵で育ったマンゴーです。今年も美味しくできてますよ!

 

―完熟したときってわかるんですか?色とかで判断とか?

 

「このアップルマンゴーは完熟すると自分で教えてくれるんです。完熟すると自然に枝から落ちます。その前にネットで保護して、実が落ちたものを収穫するんです。」


《完熟直前のマンゴー。取材は午後でしたが、その日の夕方には落ちるだろうとのこと》

 

―なるほど!わかりやすい!今後の展望などはありますか?

 

「今後もこの農法で、たくさんのマンゴーを育てていきたいと思っています。また、マンゴーを育てるにあたって、どうしても摘果という作業をしなければなりません。大きく育ちそうなものを残して間引くというこうとなんですが。甘くない、青いマンゴーです。その摘果マンゴーを利用してくれるお店が増えるといいなとも思います。今もレガーロ フェリーチェさんや駅前のイエロームングさんなんかも利用してくれていますが、もっとたくさんの方に利用してもらえるとうれしいですね。」


《摘果されたマンゴー》

 

―収穫が始まり、お忙しいところありがとうございました!

「こちらこそありがとうございました!」

編集後記

たくさんの太陽の光とたくさんの人のつながりと柳田さんの愛情をいっぱい受けて育ったマンゴーは糖度も高く、味も濃くバランスが素晴らしいものでした。
私達もこのマンゴーを使って駅前「キタノスミスコーヒー」で現在メニューを考案中です!
美味しいメニューができたらお店のインスタなどでもお知らせします!

 

「やなぎた園」
https://yanagitaen.com/
群馬県太田市東今泉町178-2

※ご購入希望の方は、一度お問い合わせください。

2019.07.11_14:44|カテゴリー:HUMAN AGRICULTURE

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