太田市南部を流れる利根川のほとりには、開けた視界と長閑な農村風景が今も広がっています。そんな豊かな地域でとれる、“ハチミツ”があるのをご存知でしょうか?その名も、「トネノワ」。利根川を起源とした、自然の循環を意味する造語です。オシャレなパッケージが印象的なハチミツですが、見た目以上にその味の評価は高く、テレビ番組でも取り上げられたほど。今回はその「トネノワ」のPRを担当する相澤さんにお会いし、養蜂の現状なども含め、お話していただきました。
生きていくために必要なものは…?
セラピストとして活動されていた、相澤さん。自身も食のたいせつさを改めて感じ、その頃はマクロビオティックなどを取り入れたりもしていたそう。
「セラピストとして仕事をしていると、成分表などに敏感なお客さんが多くて。いつもピリピリしている感じです。わたしもその頃はかなり気を遣っていましたが、やりすぎると息苦しさを感じることに気づきました。それって本当に健康的なのかな?と疑問を抱くようになったんです」
そんななか、「自分が生きていくために本当に必要なもの」を整理してみた相澤さん。すると、“調味料”というシンプルな存在に行き着きました。
「その調味料のなかに、幼少期から慣れ親しんだ“ハチミツ”がありました。食べても良し、塗っても良しの、万能薬ともいえるハチミツ。友治おじちゃんの、ハチミツ――」
そして相澤さんは久しぶりに実家に帰り、当時雑貨販売を仕事としていた兄と再会。さらに、益子のセレクトショップで働く価値観が同じ友人と一緒に、「トネノワ」をスタートさせます。
非加熱で糖度の高いホンモノのハチミツ
そもそもハチミツは、働きバチが花の蜜を巣箱に持って帰ることでできていきます。巣につくられるミツロウの壁を剥がし、その内側にあるハチミツを採って販売しているのです。安価に販売されているハチミツは、大量生産するために、ミツロウの壁が作られる前に蜜を採ってしまいます。すると水分量が多く、その水分を飛ばすための加熱処理が必要になってくるのです。
一方、「トネノワ」のハチミツは非加熱。ミツバチは自らの羽根で水分を飛ばし、ミツロウの壁で巣を覆います。それが蜜の濃度が高まった合図なので、その段階までじっくり待ってから採蜜します。そうすることで、甘みもうま味も濃厚なハチミツになるのです。ただしその分、溜まったミツロウを剥がす手間がかかるのでコストが上がってしまううえ、「今が採りどき!」というのは、長年の経験を積んでいる荒牧さんにしか判断できないのだそう。
(写真提供:藤澤卓也さん)
「しかもトネノワのハチミツは、花を限定しない“百花蜜”です。その年・そのときに咲いた、地の花の蜜でできています。なので、毎年ちょっとずつ味わいが変わるんです。それもひとつの魅力としてとらえてもらえたら……」
さらに相澤さんはこう続けます。
「ハチや自然目線になってみると、そのときに咲いた、そのときにおいしそうと思う花にハチが集まるのは自然なこと。何事においても、“ありのままがいちばんいい”のではないかなと思っています。慌ただしい毎日のなかでも、移りゆく自然を一瞬でも感じて欲しいですね」
(写真提供:藤澤卓也さん)
ハチミツを通じて伝えたいこと
相澤さんが、こんな興味深い話も聞かせてくれました。
「旅が好きでよくいろいろな国に行くんですが、ポートランドで見た光景がいまだに忘れられません。それは、お花屋さんに行くと必ずハチミツも一緒に売られていること。花が咲くのはミツバチたちが受粉を手伝っているからで、それは花だけでなくすべての植物に言えることなんですよね。つまり、自然やわたしたちの生命をも、ミツバチたちが運び、育ててくれていると言っても過言ではないんです」
(写真提供:藤澤卓也さん)
――現在ではミツバチの数が激減し、そのせいで自然環境のサイクルが崩れてしまっていることも多いそう。海外ではその重要性を理解し、保護する運動が広がっていますが、日本ではまだあまり知られていないと言います。
「今あって当たり前に感じている自然環境の尊さや儚さ、そしてありのままでいることの美しさを、トネノワを通じて感じていただきたいんです」
現在は東京と群馬を行き来している相澤さんですが、いずれは地元・太田市に帰ってきたいのだそう。「やっぱり地元が好きなんですよね。そして、この地元の良さを発信していきたい。トネノワが、そのきっかけになればいいなと思っています」と、相澤さん。そして、「“ホンモノ”をできる限り多くの食卓に届けたいんです」と、今後の展望についても熱く語ってくださいました。明るく柔らかい笑顔のなかに、一本筋の通った強さを感じさせる相澤さん。太田に戻ってきて活躍してくれる日を心待ちにしています!
『トネノワ』
*販売店やお値段はホームページでご確認ください。
(ライター:岩﨑未来)