“介護を卒業させる”新たなデイサービスセンターのかたち「あすプラスケア」

 

太田市民にはお馴染みのパン屋さん、「マイピア」さんの店舗がかつてあった場所――「新しいパン屋さんになったのかな?」と覗きに来る方も多いというその場所こそが、デイサービスセンター「あすプラスケア」さんです。おしゃれな外観に、自然素材を活かした内装……まるでカフェのような雰囲気に、そこがデイサービスセンターだとは思えないほど。なぜそのような施設をつくったのか、今回運営会社・ハピネスキー株式会社の関口さんにお話を伺ってきました。

 

 

内装もドリンクもこだわる!デイサービスセンター

 

 

施設に入ると、数名の方がリハビリ中。おしゃれなカフェのような空間でのリハビリは、初めて見る光景だけれど不思議とミスマッチではない……。そんなことを感じながら中を見渡していると、関口さんが「こちらへどうぞ~!」とミーティングルームに招いてくださいました。

 

 

2017年4月にグランドオープンとなった、デイサービスセンター「あすプラスケア」さん。内装は太田市の小島光晴建築設計事務所(http://mitsuharu-kojima.com/)が手掛け、利用者さんがホッと一息つけるカフェスペースも完備。ドリンクにもこだわり、イタリア製の本格コーヒーマシンを導入、ほかにもハーブティーや昆布茶などもあって、利用者さんは“選ぶ楽しみ”を味わうことができます。

 

 

「ここに来たら元気になってもらわないと!」

「デイサービスを利用することが、苦痛になったり億劫になったりする方もたくさんいます。送り出す身内の方も、不安や罪悪感を抱いたり……。でも本来、“元気になるため”の施設であり、介護。ここに来たら元気になってもらって、いずれ介護を卒業してもらうように務めるのが、我々の役目です」と、関口さん。そのためのひとつの心遣いとして、ドリンクもリハビリのメニューも、自分で選択してもらうようにしているのだそう。

「足や腰が弱ってくると外出するのが億劫になり、馴染みの店やオシャレな場所に行けなくなってしまうんですよね。なので、ここをカフェのようなオシャレな空間にすることで、“わたしにも行けた!”“わたしにもできた!”“自分で選んでここまでやれた!”という自信を少しずつつけてもらうことを狙いにしています」

送迎車も、よくある“介護施設の車”という感じではなく、施設の雰囲気に合ったかわいらしい茶系の乗用車。乗るとき・送りだすときのためらいが、グッと軽減されそうです。

 

手と手を取り合う「エコヴィレッジ構想

 

 

10年前に地元・太田市に戻り、介護職に従事することになった関口さん。その前は、都内などでITコンサルタントとしてバリバリ働いていました。

「30歳で独立したんですが、それを目前に胃潰瘍になったんです。そのとき、病気を治すために病院に行くのに、行くこと自体がしんどい、笑顔になれない、逆に疲れてしまうことに矛盾を感じました。その経験が、今の施設づくりに反映されていると思います」と、関口さん。さらに、地元でお父様が老人ホームを経営されていたこと、そして自身が子どもの頃におじいちゃんが認知症だった経験などもつながり、地元で新しいデイサービスセンターを運営することにしました。

そんな「あすプラスケア」さんは、デイサービスセンターとしての機能だけでなく、地域の方が気軽に立ち寄れる“相談所”のような機能も果たしていきたいそう。元々マイピアさんの店舗だったこともあり、毎週金曜日の11:30~13:30にはマイピアさんのパンを販売中。誰でも来場し、購入することができます。

 

 

施設内で使っている棚も、もともとパンを並べるためのラックだったものを再利用しているそう。

 

 

「地域のさまざまな職種・立場の人が縁でつながって、手と手を取り合う社会がつくれたら、本当に暮らしやすく、生きやすいと思うんです。持続可能なまちづくり……“エコヴィレッジ”ってやつです。その構想の第一歩として、あすプラスケアを地域のみなさんに認知してもらいたいと思っています」

 

日本初!介護・リハビリ専用車椅子の開発も

 

 

そして現在関口さんは、介護・リハビリ用車椅子「シーティング対応車椅子」の開発にも勤しんでいます。群銀サポート大賞・努力賞を受賞したこの車椅子、座ってみると無理なく姿勢が正されて、腰やお尻が本当に心地良い!

「介護やリハビリ中で車椅子を利用する人にとって、車椅子は“足”であり、“生活の場”です。現状の車椅子だと、移動・運搬には適しているのですが、介護・リハビリには向いていないんです。シートがたるみ、お尻が痛くなり、床擦れなどの2次障害が起きてしまうこともあります。そのようなことがないように、特殊なシートとバックサポートを搭載し、シーティング(心地よく座る技術)対応の車椅子を開発しています」

海外では、シーティング対応の車椅子はリハビリ・介護用としてスタンダードな存在。しかし、海外製のシーティング対応車椅子は大きすぎて、日本人の体形には合わないのだそう。そこで、関口さんは日本人の体形にあったサイズで、より心地よく車椅子を利用できるよう開発中。今後業界内で革命的なアイテムになること、間違いなしです。

「ふたりでいっしょにこんなステキな施設に来られて、本当に幸せです」と、親子でこの施設を利用している方にもお会いできました。「あすプラスケア」さんのサービスは、“介護”だけではなく、その先にある“喜び”と“自信”の提供。だからこそ、そのような利用の仕方、利用者さんの声が生まれるのだと実感しました。関口さんのお名前は、「慶(けい)輔(すけ)」さん。人を慶(よろこ)ばせ、輔(たすけ)る宿命を持った方だったのですね。

 

(ライター:岩﨑未来)

2018.02.26_16:30|カテゴリー:HUMAN|タグ:

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